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主に東方projectの二次創作について綴る事を趣旨とした、個人的ブログです。 記事のほとんどはSS関連になると思います。
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11.22.16:51

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  • 11/22/16:51

03.10.17:33

作品集50「流刑人形」蟹人間コンテスト氏

 物語というよりも、論文、そして論文というよりも、想いの込められたる手紙、そういう印象を受けた作品である。始終この作品に付き纏う堅苦しい文体は、しかし、この作品の淵源たるものとなり、氏の斬新な考察には意識せずとも引き込まれ、その雄弁な講釈に、何時しか呑み込まれてしまう。
 そうして淡々として進むこの作品の最後――そこを目にした時には、今までの冷淡とも思えるその文体が、とても慈愛に満ち溢れたものだという事に気付くのである。東方SSコンペに投稿するはずだった、と後書きにて記述されているが、もしも仮に私がコンペでこの作品を見たなら、確実に高得点を入れていただろう。



 ある覚書に記された、厄払いの風習に関する考察。



 あらすじを記すのに、私は上記の言葉以外を使う事が出来ませんでした。この作品の特性上致し方ない事だとも思いますし、私の実力不足かも判りませんが、この作品を本当に楽しむ為には最低限のあらすじだけしか必要としていないように思います。そうして、そう述べた上で私はこの作品をお勧めします。
 読者の想像力の豊かさが、恐らくはこの作品への評価を分つ要素だと思います。色々な想像や憶測をして行く中で生まれる霞が払われる事はないでしょうが、それでも私は面白く読み終える事が出来ました。これも綿密な考察を生みだした、氏の実力と云えるのでしょう。
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03.09.16:52

作品集50「蝶々の日々」MS*** 氏

 誰しもに訪れる人生の転機を、切なく、また穏やかに切り出した作品。
 景色の表現もさることながら、登場人物の感情表現などが細かく、美しい文体が特徴的で、過去の映像を映し出す表現に感服する。結婚という転機は幼き時代への決別として、また今までの友人が今までとは少し違った友人となる岐路でもある。読み終えた後には、物哀しい読後感と、時を経ても変わらぬ彼女らの一面を垣間見る事によって、云い知れぬ寂寞を感じられるに違いない。



 縁談が決まった――話があると霊夢に呼び出された魔理沙は、その言葉を聞いて、形も浮かばぬ理想の言葉を送れぬままに、自身の中に蟠った思いに心苦しくなる。何時までも変わりない事だと思っていた幼き頃の日々は、案外すぐに変わるという事実は、未だ彼女にとっては悲しき事象なのであった。
 庭先を飛ぶ蝶々は、まるでそんな昔日の自分を表しているようで、いずれ移り行く季節は、今までとは一風変わったものになるに違いない。息苦しい静寂の中で、二人は何を思うのか。――



 「今」を捉えた文体がとても印象的でした。特に庭先を映し出した情景描写が美しく、そこに秘められた切なげな響きに心を打たれます。幻想郷に住む少女たちの未来を映し出した作品は多々あれど、この短い中にこれほどまでの感情を詰め込んだ濃密な作品は、そうそうあるものではないと思います。
 これから先、霊夢や魔理沙がどういう風に日々を過ごすのか、そんな場面を見てみたいと思えるような読後感が、とても心地よかったです。是非とも一読をお勧め致します。

03.08.00:50

作品集55「神なき道に影はゆれ。」人比良氏

 氏ならではの独特な雰囲気が始終感じられる作品。文章が何を伝えようとしているのか、また物語を通して何を表しているのか、それらを判別するのは多少難儀ではあるが、雰囲気自体に味が出ているので然程の苦にはならない事だろう。
 ――が、私にはこの作品が表しているのは、「日常」であったはずの毎日が突然崩れた日なのではないのかと思う。または失った物に対する懐古か。
 そうして結末は未来へと繋がれる。何処までも続く道路の白線は、途方もない道のりを、彼女の前に現しているのだから。だからこそ、その上を歩く神の姿は、何処か朧げで儚く消えてしまいそうな白昼夢のように見えたのかも知れない。



 何処までも普通の会話、何処にでもあるような風景、他愛のない仕草、潮の、香り。
 長く長く――それこそ永遠に続いているかのような錯覚に囚われそうになってしまうほど長く続く道路を、白線が走っている。その上を楽しげに歩く神と、その姿を後ろから見守る現人神の、細やかな一風景。



 物哀しさが何処からか伝わって来る、そういう感想を抱きました。本当に不思議な雰囲気を醸し出すのが上手く、短いながらも十分に楽しめた気がします。言葉の配置――とでもいうのでしょうか、並べ方とでも表現する方が適切なのか、そういうのが作品によく合っていて、それがまた雰囲気作りに貢献している印象です。やはり氏の書く作品は奥が深い。
 

03.07.19:10

作品集57「阿礼乙女」反魂氏

 読後の感想として一言述べるのなら、「打ちひしがれた」というのが最も適切であった。始終物語の中で語られる碁の知識など、そういうものに至っては少々齧った程度の私では当然理解できるはずもなく、曖昧な想像を広げるだけに留まるのだが、しかしそれでも尚、私は氏の作品を見た事によって「打ちひしがれた」のである。
 文語表現は美しく、心情は深く、言の繋ぎは巧く、物語は素晴らしく。この作品を読み進める度に、私は数多の感情を知った。登場人物達が関わる姿が目の前にあるようで、一種映画を見ている心持ちにもなった。全く氏の作品には敬服せざるを得ない。何を取っても卓越している。この作品が、この点数で燻ぶっている理由は多々あれど、私には百点しか付けられない。それがとても歯痒く思われたのは、久方振りに経験した事であった。過去にもこうした思いを抱く事はあれ、それは極少ない事である。私はこの作品に出会えた事を、自らの僥倖だと信じて疑わない。そうして反魂氏に溢れんばかりの敬意を抱く。



 ある日思い出されたように阿求はある碁譜を並べ始める。昔日の思い出を集約した、何よりも尊い対局の模様、それを並べている内に、彼女は当時を想起する。年相応の青臭さや乙女心は色褪せる事なく、自らの思いを綴じた手紙は古臭くなりつつも、残っている。それは希望であり、慕情でもあった。
 ――が、突然自室へとやって来た家人の言葉に、それらは全く別物へと姿を変える。恐ろしき物の象徴、悲壮にまみれた哀れな時日。そうして彼女は、自らの「特技」に秘められたる意味を、初めて知る。



 読んだ直後にこうして感想を書きました。この感動をいち早く伝えたかった事もありますが、よくよく考えてみればこの感動が容易に褪せる事など有り得ない事です。
 とにもかくにも素晴らしい作品。そう評価する以外に言葉がありません。初めてこの点数で停滞するべき作品ではないと思いましたが、各々の嗜好云々に口を出すのは何とも馬鹿げた有り様ですね。
 ただ一点、阿求の口調に違和を覚えてしまいました。しかしそれを差し引いても素晴らしい。この感想と紹介を読んでくれた方には、もう真先に読みに行って欲しいくらいにお勧めします。

03.03.01:10

作品集54「厄い蟲 厄い土」三文字氏

 幻想郷という舞台を上手く使った作品。特に人里にて行われる儀式の発想がとても面白く、リグルと雛の繋げ方が実に上手い。物語終盤の美しさは必見。まるでその光景を直に目にしているような錯覚に囚われる事だろう。リグルの蟲に対する思いや、雛の人間を思いやる心なども楽しめる作品である。会話文はない。が、それによって引き出される味が、より一層この作品を美しく魅せている。


 畑を荒らす厄――つまり人間にとって害虫とするものを祓う為に、その儀式は行われる。大きな藁人形を人間達が運び、そこに集まる厄蟲達――そして彼らを誘う虫の女王と、彼らを弔う厄の神。人間と神と妖怪の不思議な関係性が垣間見えるその儀式の果てに、美しき舞踏会は始まる。



 題材などから見てもかなり完成度の高い作品です。会話文が無い、という点にこの作品を疎む方もいるかも知れませんが、そういう試み成功した形が見られる事だろうと思います。反魂氏とはまた違った表現力の高さに敬服しました。是非、一読を。

03.02.05:38

作品集54「潮騒」反魂氏

 大切な人を亡くした時、人はどうなってしまうのか。或いは嘆き悲しみ後を追い、或いは強がり勇んで必死に生き、或いは絶望の果てに死んだかのような生を送り、――また或いはその事実を受け止めて、強い意志を以て生き続ける。凡そ数え切れないほどの選択肢が、我々にはある。その中で、この物語の主人公たる彼女が決意した生き方は如何なるものであったか。私はそれを、とても強いように思う。
 この作品に秘められた悲劇は紛れもなく辛辣なものであった事だろう。淡々とした独白の中に、そういう場面は幾らでも想起される。そうしてそれを思えば、彼女の言葉がまるで自分のものであるかのように、驚くほど切なげに染み渡って来るのである。私は、ただただ氏の表現力に敬服するばかりであった。

 冷たい雨が降る夜、皆が見守る中で咲夜は穴を掘る。滔々と流れ出る過去の思い出は止まる事を知らず、主への想いは膨れ上がる一方で、突き刺さる現実を目の当たりにしながら、それでも彼女は穴を掘り続ける。
 果たして彼女は、大きなものを失ってから、何を望んだのだろうか。




 PNの事やら何やら一騒動あったらしいのですが、私は余りそういうのを気にしない性質の上、既に問題個所は修正されていたようだったので純粋に作品と向き合えたように思えます。思った事は、やはり表現力が凄いな、という事。咲夜の独白だけで此処まで色々と伝えられた事が純粋に凄いと思えました。
 しかし気になる所が一点。環境依存文字なのか、何箇所か文字がおかしくなっていた所があって、些か雰囲気を害された心持ちがします。また「暗い」を「昏い」と表記されていたりと、色々な意味で読み手に不親切な部分があったりした気がしたので、そういった所は「暗い」と表記すべきではないか、と思いました。

 是非ともお勧めしたい作品です。

02.27.00:47

作品集70「虹色有頂天」深山咲氏

 自らの原点を閉ざした少女と望まぬ境遇に陥った少女の物語。緋想の剣の一振りによって現れる鮮やかな天気がまるで目の前に広がったかのように思える繊細な描写は、静かな情景を感じさせ、読んでいると安らかな心持ちになる。こいしの気質がこれから先どのように変化して行くのか、またそれを通じて天子にはどんな変化があるのか、そういう未来を想像させてくれる読後感など、楽しめる要素は大変多い。
 短編の完成度では個人的に満点。すっきり読めて、すっきり読み終えられる事だろう。

 こいしと思わぬ出会いを果たした天子は、今宵も彼女に出会う。そうして年代物の古酒を持ち、手荷物もそこそこに静かな宴会会場へと向かった。参席するのはこいしと天子の二人のみ。こいしが訪れた時には最早定例となりつつある緋想の剣を振りかざし、彼女の気質を現そうと試みる天子は、自らの境遇とこいしの境遇を思い、憂う。――物語の果て、空に浮かんだのは、小さな小さな、けれども確かにそこに在る光。

 周囲からは捻くれているように見られても、実は真直ぐな天子、そうして普段は自由気儘に地上を彷徨しているようでも、本心は覚りである自らの存在に思い悩んでいるこいし。そんな二人の温かな一場面が垣間見れる、切なくも美しい物語。ただ一点指摘するところがあるとすれば、文章のバリエーションを増やして欲しかったというところ。実に個人的なのですが、括弧内の台詞等を描写の中で感じさせてくれたなら、もっと好くなったのではないかと思います。あくまで個人的な見方ではありますが。

02.26.01:02

作品集70「創作の果て」estine氏

 一言でこの作品を評価すると作品の題名である「創作の果て」、それが意味する所が如実に表れている作品。主観的な考えを述べる事になるが、創作の果てに得られる物とは万人によって異なる。或いは至極の踰越、或いは虚無感、或いは満足感――そういったものが多々存在する中で、この物語の鍵である自立人形を完成させた創作者アリスは、自身の目標であった至高の人形を完成させた事によって何を得られたのだろうか。
 そこを考える事でこの作品は深みを増す。登場人物達が感情のままに動く、ある種真直ぐな作品であるからか読み易く、また感情移入もし易い。そうして主な登場人物達が抱える悩みなどを直接垣間見れる心持ちもする。色々な意味で読者に優しく、エンターテイメントと評するに相応しい。
 物語を描き出す過程で、その表現方法は異なって行く。云わば「創作の果て」は直喩的な表現を重視した物語。小難しい表現を使わず、ありのままを描き出し、SSならではの楽しみがある。そうして読み終えた後、彼女らの見る世界がどうなっているかを、自然と悟っている事だろう。

 人里の中で人間を襲った妖怪が現れた、という報せを受けて退治に駆り出した霊夢は、難なく件の妖怪を始末する。が、その妖怪は人里の子供と仲が好かったと云う。その子供達から次々と非難を浴びせ掛けられ、霊夢は自身の存在価値について今一度考え直し始める。その頃アリスは念願であった完全なる自立人形の制作を終え、その行程の最終段階を残すのみという所まで漕ぎ着けていた。それが数奇な運命の交差点。悩む霊夢と自身の目的に忠実なアリス――二人は久方振りの再会を博麗神社にて果たす。
 物語はそうして動き始める。何処か歪な物語は、未だ幕を開いたばかりなのである。


 惜しむらくは戦闘描写。
 戦闘描写に必要なのは、その光景が目の前で繰り広げられているかのような躍動感、或いは相対する者が持つ想いの交差。そういったものが無ければ、凡そ文章という形で戦闘は楽しめない。この作品の中で一番の欠点があるとすれば、そこだと思いました。比較的長い場面だっただけに、そこが素直に楽しめないとなると、飽きが来る人も居るでしょう。この作品に於いてあの戦闘描写はとても重要な位置を占めているように思ったので、殊更惜しいと思ってしまいました。
 今後、筆力が更に向上した氏の作品を是非とも読んでみたいと思えました。

02.24.21:48

作品集70「聲」過酸化水素ストリキニーネ氏

 死人に口なし心なし。
 死体は何をも語らず何をも伝えない。そうなってしまえば物云わぬ骸、醜い姿を晒す木偶となる。だから生者は生者らしく生気に満ち満ちた行動をしなければならない。死者を弔えるのは生者のみ、そうして死者を悼む事が出来るのもまた、生者だけなのだから。――そんな事を伝えられたような気がした作品。

 寒い寒い空気の冷えた朝、飼っていたペットが一匹死んだという報せをお燐から聞かされた。取り乱す彼女に、主人であるさとりは、宥めるとも諭すとも付かない云い振りで、「埋めなさい」と云う。遠く昔の日、己が身を傷付けてまで弔った死体の記憶――そんな過去の情景が、お燐の姿に重なったさとりは、過去を、未来を見据えて自らの妹の心境を慮る。心を閉ざした彼女は何を思って行動するのか、遠く昔の日、知らぬ間に与えられた傷跡は残っていやしないか、彼女は次第に過去の世界へと己を沈めて行く。
 辛く、寒い日の世界へと。

 対象の心を読むという複雑な設定があるさとりを上手く動かしている作品、とういうのが第一印象でした。しかし、一方で他の作品と一変した部分なども感じられず、設定をそのままに使っている感じを受けたのが、残念といえば残念な個所でもありました。生物の心の中は常にして騒がしいものですが、その騒がしさがあまり感じられず、混濁した思考が一切ないまるで機械のような登場人物達という風に思った、というのはいくらなんでも深読みが過ぎたと云わざるを得ませんが、出来る事ならもっと違ったアプローチを掛けて欲しかった、というのが本音です。けれどもその直情が直に伝わって来て、感情移入のし易い作品でした。

02.23.22:47

作品集70「地獄は良いとこ一度はおいで」 三文字氏

 読んでいて決して疲れないリズミカルな文章と、楽しげな様子が見えて来そうな地獄の光景を映した作品。長さはそれほどでもなく、先に云ったリズミカルな文章が、長かろうと短かろうと読者を疲れさせず、それどころか一文を読めばまた一文、そしてまた一文と読む事が止まらなくなるような楽しさが、この作品には込められている。読んで面白いと感じるのではなく、読みながら面白いと感じる作品という評価が、一番正しいのかも知れない。

 地獄は何時でも酔いどれ達が騒いでいる。そんな中で名を馳せた酒豪でもある星熊勇儀は、今日も今日とて盃を呷る。どんちゃん騒ぎの中、地底に住んでいる色々な妖怪が加わって行き、勇儀との飲み比べに敗北を喫する者が後を絶たぬ中、彼女は昔の友人を思い出す。地底と地上を繋ぐ穴の向こう、盃を共にした友人は何をしているのだろうか、そんな事を考えていると、彼女の前に見知った瓢箪が現れた。

 正に読み易いと云える作品。特に萃香と勇儀が再開した時の会話には心躍る感情を覚えました。お勧めの作品。