11.22.23:28
[PR]
03.08.00:50
作品集55「神なき道に影はゆれ。」人比良氏
氏ならではの独特な雰囲気が始終感じられる作品。文章が何を伝えようとしているのか、また物語を通して何を表しているのか、それらを判別するのは多少難儀ではあるが、雰囲気自体に味が出ているので然程の苦にはならない事だろう。
――が、私にはこの作品が表しているのは、「日常」であったはずの毎日が突然崩れた日なのではないのかと思う。または失った物に対する懐古か。
そうして結末は未来へと繋がれる。何処までも続く道路の白線は、途方もない道のりを、彼女の前に現しているのだから。だからこそ、その上を歩く神の姿は、何処か朧げで儚く消えてしまいそうな白昼夢のように見えたのかも知れない。
何処までも普通の会話、何処にでもあるような風景、他愛のない仕草、潮の、香り。
長く長く――それこそ永遠に続いているかのような錯覚に囚われそうになってしまうほど長く続く道路を、白線が走っている。その上を楽しげに歩く神と、その姿を後ろから見守る現人神の、細やかな一風景。
物哀しさが何処からか伝わって来る、そういう感想を抱きました。本当に不思議な雰囲気を醸し出すのが上手く、短いながらも十分に楽しめた気がします。言葉の配置――とでもいうのでしょうか、並べ方とでも表現する方が適切なのか、そういうのが作品によく合っていて、それがまた雰囲気作りに貢献している印象です。やはり氏の書く作品は奥が深い。
PR
- トラックバックURLはこちら