11.22.23:26
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02.24.21:48
作品集70「聲」過酸化水素ストリキニーネ氏
死人に口なし心なし。
死体は何をも語らず何をも伝えない。そうなってしまえば物云わぬ骸、醜い姿を晒す木偶となる。だから生者は生者らしく生気に満ち満ちた行動をしなければならない。死者を弔えるのは生者のみ、そうして死者を悼む事が出来るのもまた、生者だけなのだから。――そんな事を伝えられたような気がした作品。
寒い寒い空気の冷えた朝、飼っていたペットが一匹死んだという報せをお燐から聞かされた。取り乱す彼女に、主人であるさとりは、宥めるとも諭すとも付かない云い振りで、「埋めなさい」と云う。遠く昔の日、己が身を傷付けてまで弔った死体の記憶――そんな過去の情景が、お燐の姿に重なったさとりは、過去を、未来を見据えて自らの妹の心境を慮る。心を閉ざした彼女は何を思って行動するのか、遠く昔の日、知らぬ間に与えられた傷跡は残っていやしないか、彼女は次第に過去の世界へと己を沈めて行く。
辛く、寒い日の世界へと。
対象の心を読むという複雑な設定があるさとりを上手く動かしている作品、とういうのが第一印象でした。しかし、一方で他の作品と一変した部分なども感じられず、設定をそのままに使っている感じを受けたのが、残念といえば残念な個所でもありました。生物の心の中は常にして騒がしいものですが、その騒がしさがあまり感じられず、混濁した思考が一切ないまるで機械のような登場人物達という風に思った、というのはいくらなんでも深読みが過ぎたと云わざるを得ませんが、出来る事ならもっと違ったアプローチを掛けて欲しかった、というのが本音です。けれどもその直情が直に伝わって来て、感情移入のし易い作品でした。
死体は何をも語らず何をも伝えない。そうなってしまえば物云わぬ骸、醜い姿を晒す木偶となる。だから生者は生者らしく生気に満ち満ちた行動をしなければならない。死者を弔えるのは生者のみ、そうして死者を悼む事が出来るのもまた、生者だけなのだから。――そんな事を伝えられたような気がした作品。
寒い寒い空気の冷えた朝、飼っていたペットが一匹死んだという報せをお燐から聞かされた。取り乱す彼女に、主人であるさとりは、宥めるとも諭すとも付かない云い振りで、「埋めなさい」と云う。遠く昔の日、己が身を傷付けてまで弔った死体の記憶――そんな過去の情景が、お燐の姿に重なったさとりは、過去を、未来を見据えて自らの妹の心境を慮る。心を閉ざした彼女は何を思って行動するのか、遠く昔の日、知らぬ間に与えられた傷跡は残っていやしないか、彼女は次第に過去の世界へと己を沈めて行く。
辛く、寒い日の世界へと。
対象の心を読むという複雑な設定があるさとりを上手く動かしている作品、とういうのが第一印象でした。しかし、一方で他の作品と一変した部分なども感じられず、設定をそのままに使っている感じを受けたのが、残念といえば残念な個所でもありました。生物の心の中は常にして騒がしいものですが、その騒がしさがあまり感じられず、混濁した思考が一切ないまるで機械のような登場人物達という風に思った、というのはいくらなんでも深読みが過ぎたと云わざるを得ませんが、出来る事ならもっと違ったアプローチを掛けて欲しかった、というのが本音です。けれどもその直情が直に伝わって来て、感情移入のし易い作品でした。
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