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主に東方projectの二次創作について綴る事を趣旨とした、個人的ブログです。 記事のほとんどはSS関連になると思います。
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  • 05/18/16:27

11.15.16:40

幻想郷大戦#7

東方SS五十一作目。
たまには激しく戦闘物。


平和の名残は役に立たない。
必要なのは、何処までも純粋な残虐性である。

 霊夢は地上へと叩き落とされていた。膨大な数量の虫達が、霊夢にそれを余儀なくさせた。その針に、一度でも刺されたなら、命は一つ消え行くだろう。霊夢は何としてもその攻撃を回避せねばならなかった。虫達の王だと自称する、リグル=ナイトバグが召喚した毒虫の攻撃を。

 小さな体躯で、四方八方から千を超える群体で襲い掛かるその虫は、しかし一度も霊夢の肌を刺してはいない。彼女が展開した結界は淡い光を放ちながら、霊夢を守るように在る。小さな虫では脆弱と云って差し支えないその結界ですら貫けはしない。




 しかし、圧倒的に不利な状況に霊夢が居るのは明白である。護身用の結界を展開しながら、リグルが直接放つ弾丸を避け、そして自分からも攻撃しなければならない。それがどんなに集中力を要するのかは想像に難くない。結界を保つのでさえ、小さな穴に糸を通すが如くの集中力を要する。攻撃は狙わなければ中るべくもない。彼女は小さな針の穴に糸を通しながら、他の事を行っているのと同義で、到底どちらか一方に裂く集中力の内訳など、考える暇でさえ持ち得なかったのである。――だからこそ、空中にて自らの強さを自負するように、逃げ回る霊夢の姿を見るリグルは、あらゆる意味で理を表している。霊夢は彼の者の強さを認め無ければならぬ。




 そうして、小さな虫が逃げる霊夢を追い回し、そこを狙って弾を放つリグルとの間の戦闘は、続いた。最早結界を張る為に用いる札は、焼き切れんばかりである。霊夢は努めてリグルを倒さねばならない。でなければ、やがて破れる結界が虫達の侵入を許し、瞬く間に命を奪い去って行くだろう。……


 


 





 


 




「好い様ね。逃げ回るだけで攻撃もままならないなんて。博麗の巫女が、なんて哀れな体たらく!」




 そう云って、リグルは蛍のように淡い光を放つ光弾を、霊夢に向けて飛ばす。それは一つだけの弾であった。それ自体が、既に霊夢を嘲笑っている。時間をかけて嬲り殺しにしてやるという意思が表れている。本気で殺そうとするのならば、スペルカードを使用すれば好いだけの話なのである。リグルは勝利を確信した後にもたらされる慢心に酔いしれていた。それだから、霊夢の滑稽を笑い続けている。




 霊夢は自分を嘗めている一つだけの弾を回避しながら、空に浮かぶ虫の王を睨み付けた。自分を追い回す小さな虫達はまだ結界の中には入って来れない。霊夢を中心とし、長方形を作るようにその四隅に札が明滅している。それらは今にも焼け切れそうになりながら、今際の力を振り絞っていた。時間の問題だ、そんな結論に至るのは当然の事である。




「所詮お前もその程度、永い夜に不覚を取ったのはあの隙間妖怪が居たからね」

「随分と大きな口を叩いてくれるわ。そういうあんたは虫達に頼りっぱなし」

「それが私の能力なのよ。虫達は私の味方であると共に、私の武器なんだから」

「――何にしろ、こんなつまらない戦いはすぐに終わらせたいものね」




 霊夢は結界を作る四隅の札を横目に捉えながら、残り時間の少ない事を悟った。結界は張り直せるが、一瞬でも結界が解ければ虫達は侵入を試みるだろう。事前に二重結界を張れば、それも防げるが、消耗する力の量が比較にならない。この戦いで全ての力を使い果たせば、紫の所など到底辿り付けまい。早期に決着を着けなければならないのは、必然の事象である。それを考慮したのか、霊夢は一枚の札を取り出した。




 ――霊符と書かれているその札は、しかし発動しない。また霊夢が発動の条件を満たす事もなかった。霊夢のスペルカードには殺傷能力が存在しない。スペルカードルールを敷いた際に、殺傷能力を全て削ぎ落したからである。彼女が求めたのは、異変の楽な解決であった。そうしてもたらされる幻想郷の平和であった。だからこそ、スペルカードに殺傷能力は不要だったのである。けれども、今この時点で、霊夢のカードは以前と比べて何も変化していない。それは単なる〝遊び〟に使う攻撃方法でしかなかった。




「スペルカード? 使うなら使えば好いわ。それで勝てると思うのなら。何も殺せないそれで、私を倒せると思うのならね。――尤も、だからと云って大人しく中ってあげる訳もないけど」

「――霊符、夢想封印」




 霊夢は無機質な表情のまま、漸く発動の宣言をする。直後、彼女の周りには七色の光弾が現れる。結界の力を弾の形に凝縮し、身を守る為でなく完全に攻撃に特化させたその光弾は、霊夢の周りを高速で回り、虫達を一掃してから空に浮かぶリグルの元へと、猛烈な勢いで向かって行った。




「面白い、どちらの力が上かどうか、はっきりさせてやろうじゃないか! ――蛍符! 地上の彗星!」




 次いでリグルが、スペルカードの宣言をする。既に彼女のスペルカードには本来されるべき制限はされていない。リグルの力を受けて、防御壁を身に纏った蛍の群れは、まるで大地を穿つ彗星の如き勢いで飛来する。霊夢が発動した夢想封印と衝突するのは、間もなくであった。中空で爆音が一度轟いたかと思うと、それに続けて二三度と爆音が続く。空に咲く花火のようだと弾幕ごっこを評する者は驚いたに違いない。花火などという趣向など微塵も消え失せた、ただ純粋な爆発が、その空には広がっているのだ。




「はははは! そんな攻撃は私には届かない。あと幾つかしら、それが無くなるのは!」




 爆音はこれまでに六度鳴った。霊夢が発動した夢想封印の弾の数は七つである。――最後の一つも、やがて何処までも響きそうな大きな音に変わり、掻き消えた。彗星と化した蛍の力はとてつもなく強大であった。霊夢の弾が無くなると、空に広がった灰色の煙の中から、雨のように彗星は落ちて来た。先刻霊夢が立っていた場所に向けて、着地点を集中している。この流星群に当たったのならば、死から逃れる術はないだろう。




「――やはりそうだ! 私こそが王と称されるに相応しいのよ!」




 空気すら裂き、恐ろしい速度で特攻した蛍の群れは、次々に大地に穴を空けた。大地は捲れ、木々は薙ぎ倒され、岩は砕かれ、土煙は辺り一面を覆い隠し、その雨の中に未だ存在する生命など皆無に思われる。故に、高らかに響き渡ったリグルの言葉は発せられたのだ。あれほど強大な存在だと妖怪達に畏れられ、幻想郷の守り手として絶対の実力を兼ね揃えた博麗の巫女が、永い夜の日に屈辱を受けた自分に圧倒されている!




 ――雨は止まない。巫女は姿を現さない。土煙だけが、辺りを包み込んで行く。


 


 


 


 


 


 




――続

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