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主に東方projectの二次創作について綴る事を趣旨とした、個人的ブログです。 記事のほとんどはSS関連になると思います。
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  • 05/18/14:21

11.14.11:53

幻想郷大戦#6

東方SS五十作目。
たまには激しく戦闘物。


小さき力の反逆を思い知れ!
これが我々の革命である! ――リグル=ナイトバグ

 博麗霊夢は燦と輝く太陽の下を、滑るように飛んで行った。魔理沙や萃香と別れたのはつい先刻である。したがって大した距離は進んでいない。のんびりと飛んでいる訳ではないから、多少の距離は進んだが、それでも目的の地はまだ遠い。元よりその存在さえ曖昧な場所である。迷子以外に辿り付けるかも判らない。




 空から見下ろす幻想郷の大地は平生の通り静けさに満ちている。まるで誰もが平和にのんびりと暮しているかのように思われる。今の自分と、その大地とを比較すると、霊夢は図らずも自分の境遇を恨めしく思った。甚だ懸け離れている。危機感を感じているのはもしかしたら自分一人かも知れない。そうとまで思った。が、確かに経験した危機を顧みれば、どちらが正しいのかは判り切っていた。例え地上の人間達が未だに身に迫ろうとしている危機に気付いていなくとも、自分一人はそれを経験している。それだけが、今の霊夢にとって或る意味の安堵をもたらした。




 ――人里の人間は魔理沙がどうにかしてくれるだろう。萃香も各地を飛び回ると云った。援軍も思いの外多いのかも知れない。霊夢はそんな期待を胸に、そして僅かな不安を胸に、また前を見据え、飛行の速度を上げた。


 


 


 





 


 


 


 


 初めは、ただの違和感であった。どんな違いがあるのかも知れぬ、本当に些細な何かの相違。霊夢はそれに気付いていた。だが、それが小さいのは先に云った通りで、何がそのような違和感をもたらしているのかは一向判らないままである。したがって霊夢は本来の目的地を目指して飛ぶより他にない。邪魔立てをする者があったなら、突破するのみである。彼女は実に単純で明快な問題に捉えていた。敵が出ようとも倒せばいい程度に考えていた。




 だからこそ、この違和感は気色が悪かった。常に誰かに監視されているかのような不快感がある。誰かの視線が自分の一挙一動すら見逃さぬように見詰めているかのように思われる。しかもその考えは決して過剰ではない。誰彼でさえ、この視線に違和感を持つだろう。何かの黒い瞳が、無機質な光を湛えて自分を見ているかのようなおぞましい感覚に。




「誰」




 ――霊夢は遂にその場に止まった。大地を拒絶するかのように浮遊する彼女の周りには誰一人として居ない。ただ白い雲ばかりが遠くに見える。生物の息遣いなど聞こえて来ようはずもない。それでも霊夢が停止したのは、不快な視線の中に確かな敵意を認めたからである。或いは博麗の巫女としての勘が告げる危機に、気付いたからである。そうしてその双方は、共に間違いでない。間もなく彼女の周りには、小さな虫の群れが現れた。




「……」




 ぶんぶんと、羽が動く音が彼女を取り巻く四方八方から聞こえてくる、霊夢は目付を鋭くして、虫の群れを睨み付ける。すると、規則正しい循環の元に霊夢の周りを旋回していた虫達の目が、ことごとく自分を捉えているように思われる。無機質な瞳が、全て霊夢を映している。全く気味が悪かった。そうして未だに正体を現さないこの事象の元凶を威嚇するように、懐から札を取り出し、戦闘態勢を取って見せる。

 ――漸く虫の群れは霊夢から離れた。明らかになる視界の中には、一人の少女が薄ら笑いを浮かべている。




「何の用かしら。私は今、とても忙しいのよ」

「何の用? ――さあね。何だと思う、博麗霊夢」




 頭から伸び出た触覚を撫でながらマントを風に靡かせる、まるで少年のような佇まいの少女は、くつくつと喉を鳴らしながらさも面白いとでも云いたげに、そんな事を聞いた。




「知らないわ。でも、邪魔をするなら容赦はしない。余り時間がないから」

「自分で作った井戸の中しか見てない蛙が、〝容赦はしない〟だって?」

「何が云いたいの」

「甘い規則を作ってそれに準じ爛れた巫女は、私に勝てないって云っているのよ」




 云い終わると同時に、彼女――リグル=ナイトバグの目付きは霊夢のそれと同じになった。否、もしかしたなら霊夢のそれよりも強いかも知れない。真に容赦のない殺意が、淡い緑色の目に込められている。霊夢の視線から甘さは消えていない。容赦のしない覚悟が秘められていても、絶対の殺意が圧倒的に足りぬ。それだけで両者には歴然たる差が見て取れる。萃香に悟らされた時から覚悟は出来ているはずであった。けれどもいざその覚悟が生きる戦いになって、霊夢は自分がたじろいでいるのを自覚している。それが情けなくて仕方がない。




「それで、何時かの恨みでも果たしに来た訳?」

「よく判ってるじゃない。あんたが敷いた規則の外で一対一。かつてない平等なルールだわ」

「なら、瞬殺はされないように準備しなさいよ。忙しいんだから」




 霊夢は一度、深呼吸をした。そうして口の中で殺す、と繰り返し呟いた。相手がこちらを殺す気で来ているからにはこちらもそれに対応せねばならぬ。もしも甘えを見せる事があれば、それは瞬時に敗北へと向かう行為になり得るであろう。だからこそ、霊夢は敢えて強い言葉を用いて、相手を挑発する。殺すのはやむを得ないと、自分に云い聞かせる為に。




「大きな口は慎む事ね。恥を掻きたくないのだったら」




 リグルはそう云って、殺気を全身に漲らせた。その彼女に呼応して、到底数え切れぬほどの虫達が何処からか集まり、リグルに従属する意思を表すかのように、霊夢を見据えて止まった。虫の王、リグル=ナイトバグの真の姿は、初めて霊夢の前に現れる。霊夢は慄然すらしそうになる威厳を、そこに認めた。なるほど過酷な戦いになりそうである。萃香の言葉は真実を指していた。




「嘗められ続けた虫達の怒り、その身で感じ取れ! ――これが私達の革命だ!」




 か弱き虫の一人であった、蛍の妖怪は、革命に足る十分な力を持って切望した目的を果たすべく、戦いの幕を上げる。それが如何ほどの実力か、予想も付かない霊夢は札を取り出して、膨大な量の虫達の真中に居るリグルを睨み付ける。楽しげな笑みさを浮かべる彼女の顔は、目的の遂行を確かに遂げるという自信があった。




 ――殺す。霊夢は口の中に、再び呟いた。


 


 


 


 




――続

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