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主に東方projectの二次創作について綴る事を趣旨とした、個人的ブログです。 記事のほとんどはSS関連になると思います。
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  • 11/22/16:39

03.28.20:07

作品集72「像をつくる、護る」くつした氏

 飼い猫、或いは飼い犬などが死んだ時、それを「死んだ」と捉える事が出来ない稚児のような自然の権化は、墓参りの意味も判らないまま、悲観に暮れる女の泣き声を聞き、ただ彼女の為を思いながら氷像の制作に取り掛かる。それは無邪気な子供の微笑ましい一面であると同時に、余りにも非力な子供が、必死に現実に抗おうとする様を酷薄に描き出しているのかも知れない。死んだ者は生き返らぬ。――それは真理なのだから。
 個人的な見解として、文章の書き分けがなされているように思われる。その手法が見事に物語との調和を生み出していて、文章としても、物語としても十分に楽しめた心持ちである。ただ「死」という絶対的な存在を題材にするに於いて、その過程が描かれていないのは私には少しだけ物足りなく思われた。「死」を描写しない事によって伝えられる事も多々あるが、その重さについても語らねばならぬ事は多くある。私はこの作品で、そういう部分を見たいように思った。



 何時しか厳かな館の門前に佇む門番の女と、無邪気な童女が戯れる光景が見られるようになった。一方は深い悲しみを忘れる事が出来ぬまま、一方はただただ楽しみながら、二人は他愛のない遊びに興じていた。――そうして今は昔、失われた者の痛みは、時を越えて二人の前に現れる。それはともすれば狂気の塊、醜穢なるものの権化のようでもある。それを癒しせしめる儚く弱い雪華の花弁は、必死に咲き誇りながら、容易く崩れ堕ちてしまう事であろう。暖かな温もりを、大切な人へ残しつつ。



 読んでいて、何だか優しさのある文章だなと思いました。却ってそれが文章の流れを単調にしている、と感想では書いたのですが、もしかすればそれすら作者様の意図の中に含まれていたのかも知れません。ただ私はいち読者として、思った事を書いたのですが、それを恥じるべき時が来るやもしれませんね。
 ただ、或る人の死を背景に置きながら進行して行くので、本当に物語の中へ入れ込める場面が終末へ集約されていたのが、些か残念でもありました。例えば美鈴と「彼」が出会った場面など、そういった場面が存在していた事を前提として、人妖の間にある隔たりを原因とした熾烈な展開があれば、更に楽しめた事だろうと思います。けれども後書きにて記述されている「なんの捻りもないですが~」という文を見て、「ああ、だからこそ素直に読み進める事が出来たのか」とも思いました。
 感情が気付けば心の中に流れて来るような――そんな切なくも温かな話であったと思います。是非、一読を。
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